指の動きに合わせて節ごとに可動するアーマーリングは独創的なデザインが魅力ですが、可動部を支えるピンに負荷が集中しやすく、折れや変形、緩みが起きたまま使用すると可動域が崩れて装着感が悪化し、最終的にはユニットの脱落や紛失につながるリスクがあります。大切な一本を長く楽しむためには、症状が小さいうちに専門リペアで構造を正しく整えることが重要です。今回はヴィヴィアンウエストウッドのアーマーリングで折損ピンの再製作と全体の新品仕上げを行った修理実例をご紹介します。

【症状と確認項目】
ご来店時点で中節ユニットのピン折れを確認し、可動軸の偏摩耗、各ユニット間クリアランス、歪み、表面の細線傷、くすみ、メッキの残存状態を総合チェックしました。赤丸で示された箇所は完全折損で、一部に変色と擦れによる光沢低下も見られました。ピンが欠損したままの使用は周辺穴の拡がりを招くため、まず強度と寸法公差を満たす新規ピン製作が最優先と判断しました。

↓ご依頼時の状態↓

↓修理完了↓

【修理方針と工程】
可動穴の状態を計測し、摩耗で楕円化した部分は最小限の修正で真円度を確保、基準径に合わせてピンを新作します。素材硬度は可動耐久と加工性のバランスが要であり、硬すぎると周辺を傷め、柔らかすぎると早期に緩みが出ます。そこで応力分布を考慮しつつ芯径を微調整、圧入後に面取りして段差を無くし、装着時の肌当たりも配慮しました。組み込み後は各ユニットが過不足なく動くか、指の屈伸で引っ掛かりがないかを複数角度で確認し、最終的にトルク感を均一化してから仕上げ工程へ移行しました。

【新品仕上げと外観の回復】
表面の微細傷は過研磨を避けながら段階研磨で整え、鏡面域と艶消し域の切り替わりをデザイン原型にならって再現しました。必要箇所のみポイントリペアを行うことでエッジの輪郭を残し、全体としては新品に近い光沢と陰影のバランスに回復しています。強い打痕や深い傷は素材厚と安全性を優先し、無理な除去は行っていません。結果として装着時の滑らかな可動と、視覚的なシャープさの両立が実現できました。

【再発防止と日常ケア】
可動部の負担を抑えるには、指を大きく反らせた状態での着脱を避け、上下から均等に力をかけるのが有効です。衣類に引っ掛けやすい場面では一旦外す判断も有益で、保管は個別ポーチで他アクセサリーとの接触を避けると細線傷の抑制に役立ちます。汗や皮脂が付着したまま長期保管すると変色や可動渋りの原因になるため、柔らかいクロスで軽く拭き上げるだけでも状態維持に効果的です。違和感や可動の偏りを感じたら早期点検が推奨です。

【事例のポイント】
・折損ピンを新規製作し、圧入と面取りで段差とガタを解消。
・可動穴の真円度を確保して各節のトルク感を最適化。
・新品仕上げで全体の艶と輪郭を回復しつつ、素材厚と安全性を優先。
・装着テストで日常動作における引っ掛かりと可動域を確認。

【ヴィヴィアンウエストウッドアーマーリングにまつわるFAQ】
Ｑ．ピンを無くしてしまいました。修理は可能ですか。
Ａ．はい、寸法公差に合わせて新規ピンの製作と組み込みが可能です。周辺穴の摩耗や歪みが大きい場合は補正を行い、可動トルクを整えてから仕上げます。

Ｑ．仕上げで元の光沢は戻りますか。
Ａ．浅い擦れやくすみは段階研磨で大きく回復します。深い打痕は素材厚を超える過研磨を避けるため、目立ちにくい仕上げで安全性を優先します。

Ｑ．再度折れにくくする対策はありますか。
Ａ．着脱時の力の掛け方や保管方法の最適化で負担を軽減できます。可動渋りやガタつきは早期点検で損傷拡大を防げます。

【ご相談の流れと安心のポイント】
可動部の不具合は見た目の小さな違和感から進行することが多く、早い段階での診断が仕上がりを左右します。当店では可動構造の点検と強度設計に基づく修理方針を丁寧にご説明し、作業範囲と想定リスクを明確にしたうえで着手します。完成後は可動域と装着感を複数動作で検証し、日常ケアのコツもお伝えします。構造が特殊で他店で断られたケースでも、実績に基づく代替案をご提示できる場合があります。まずは症状の共有からお聞かせください。

【最後に】
アーマーリングは個性と可動の楽しさが詰まった一本だからこそ、正しい修理で本来の快適さと造形美を取り戻せます。今回の事例では新規ピン製作と新品仕上げにより、節ごとの動きと美観が健全化しました。違和感を覚えたら無理に使い続けず、早めの点検で長く安心してお楽しみください。

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